精神科開放入院1日目

本気で死ぬつもりだった。今度こそ飛び降りると決意していた。

 

詳細は伏せるが、僕はここ8年間ある資格の取得を目指して大学・大学院に通っていた。その資格を使って就職するつもりでいた。

しかし、まず就職活動で大きくつまずいた。僕はパニック障害という持病があり、慣れない環境で酷く不安になってパニック発作を起こし、気分が悪くなって目の前が暗くなり文字通り倒れてしまう。就職面接がとても不安だったが、職を得るためにはそれは乗り越えなければならない。だから面接はなんとかこなそうと思っていたのだが、面接場所が遠く、朝の通勤ラッシュ電車に長時間乗らないといけなくなった。心身共に耐えられず、当日の朝ちゃんと起きて準備したのに、玄関で発作を起こして動けなくなり、行くことができなかった。もうこんな状態で就職なんて無理だ、死にたいと思った。

極めつけに、1月末、資格取得の要件を満たせずに退学することを強いられた。原因は僕の体調不良に加えて大学教員によるパワハラである。8年間のすべてが無駄になった。病気を抱え入退院を繰り返しながらなんとか授業に出席し、レポートを書き、試験を受け、実験や実習をし、単位を取り、論文を読み、論文を書く…正直めちゃくちゃ苦労してきた。でも資格のためならがんばれた。なのに、資格を取れなくなった。夢は壊れた、全部無駄だった、何も報われなかった。死ぬしかなくなった。

 

死ぬことを宣言し、最期に言い残そうと思って教員からのパワハラを告発し、身辺整理をした。

 

…タイトルにもある通り、僕は死なずに入院している。

僕の状態を知った人が、僕が通っている精神科に連絡を入れたのだ。事情を知った精神科医がすぐ僕に電話をかけてきた。その精神科医が僕と無縁であれば、本気で死ぬしかないと思っていたからどうでもよかったのだが、電話主は僕が4年前に初めて入院した時からお世話になっていて僕のことをよく知っている、とても信頼している医師だった。忙しいだろうに数十分会話をしてくださり、「今、死にたい気持ちがとても強いんじゃないですか」と優しく問われた時、限界だった僕はそれを否定することがどうしてもできなかった。泣きながら「無いとは言えません」と答えるのが精一杯だった。「入院しよう、僕たちは絶対にあなたの味方だから、助けるから」と言われて、涙が止まらなくなった。

加えて、死ぬと宣言してから、周りから数えきれないほどのメッセージが届いた。友人からはもちろん、見知らぬ人からのTwitterのDMなど、寄せられたメッセージは50通を超えた。みんな優しくて「大丈夫ですか」「心配しています」「どうか救われてほしい」「簡単に『生きて』とは言えないけれど、なんとか大丈夫になってほしい」「一旦入院して休んで、それからまたこれからのことを考えませんか」などと温かかった。僕の大好きな音楽の演奏会配信を無料で聴けるようネットチケットをくださったプロの音楽家さんもいた。それが僕を躊躇わせた。

 

資格が取れないとわかった日から、狂ったように泣き続けた。数年間泣いていなかったのに涙が止まらなくなった。入院すると決まった日からは死にたいのに死ねない焦燥感で身の置き所が無く、吐き気も止まらなくなった。本当に苦しかった。

 

結局、精神科の主治医が手配してくださって、今日から入院している。閉鎖病棟でインターネットから遮断されるのがどうしても嫌で、無理を言って開放病棟にしてもらった。診察の時、「あまりにも危ないからやっぱり閉鎖病棟にしよう」と提案されても、「でも今は感染症予防のために病棟からエレベーターホールに出る扉が常時施錠されてるじゃないですか、だから開放病棟でも看護師に言わないと外に出られないし、必要なら精神保健指定医が僕に行動制限(外出制限)をかければ実質閉鎖になるでしょう」とゴネて、開放病棟を勝ち取った。実際に行動制限をかけられたので病棟からは出られない。

夕方の回診の時ちょうど部屋で泣いていて、医師が来た時に「とてもつらそうだけど」と訊かれて「生きたくないのに死ねないのがとてもつらいんです」と号泣してしまった。こんないい歳をして人前で泣くのは嫌なのに涙が止まらない。

 

そういえば今回の担当の指導医、2018年の春に過量服薬で救急搬送された時に会ったことがあるな。

 

今後どうなるかはまったくわからない。生きたくないし、希望も見えない。でもしばらく外には出られない。本当にどうなるんだろうか…